はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」
その日の季節は覚えてないけれど、無気力にテレビを見ていた時に、流れたその音楽が出会いだった。
初めて知ったのは、日新カップヌードルのCM。
侍が主君に向けて刀を振るいます。そして現代の刀は、この光る棒。
そんなナレーションから始まり、流れるハイテンポな音楽、キレのいいダンス、一矢乱れぬペンライトのオタ芸、そして6人組のアイドル。
それが、でんぱ組.incを初めて知ったきっかけでした。
最初はアイドルの名前も曲の名前も何一つ知らなかったので、『あー、なんかいい曲だなー。』ぐらいの認識しかなく、数ヶ月経ってそのCMソングのこともすっかり忘れて日常を送ってました。
とある日。
ちょくちょく話すクラスメイトに、川で遊ばね?と誘われ今にして思えば完全に陽キャが誘ってきたのを覚えている。
遊んでる最中に有人が携帯電話でBGMをかけていて、その時に聴き慣れたリズム、テンポ、うろ覚えだけれど歌詞が流れてきた。
その時に初めて、あの日耳に残ったCMソングがでんぱ組.incだと言うことを知った。
『へー、あの曲歌ってるアイドルグループでんぱ組.incって言うんだ。』
その時はまだそのレベルだったけれど、高校を卒業して専門学校でいわゆるでんぱ組.incのオタクがいて、何気ない会話の最中にでんぱ組.incの単語が出てきて『あー、それ知ってるわ、あのカップ麺のCM歌ってたアイドルでしょ?』とかなんとか相槌を打ったが最後、1の相槌が15くらいになって返ってきた。
その人との出会いがきっかけでますますでんぱ組.incを知ることに。
思えばこの頃ちょうどライブツアーがやっていて、たまたま地元に来るって言うものだから行ってみよう!と言う話に。
元々2次元のアニメオタクだったため、なんとなく3次元のアイドルが可愛いと思えずに完全に友人の誘いのノリで行ってみたのですが、めちゃくちゃ楽しかったしライブに行って、初めてアイドルを可愛いと思えました。
多分ライブに行ったあの日、初めて『感情』を知った。
エモいとはこのことなのか。普段はローテンションなのにこれは盛り上がらざるを得ない。
他のドルオタ達は曲に合わせて、コールアンドレスポンスやサイリウムを振っていたが私はもちろん何もわからずにただただ曲を聞いていただけなのに楽しかった。
アイドル達のパフォーマンス、生歌、振り付け、幕間のMC、ライブの臨場感、サイリウムの綺麗さ。
そのどれもが新鮮で、そして尊かったのを今でも覚えている。
『CMで流れていた曲』と言う認識だけだったのに、でんぱ組.incは今では生活の一部に欠かせない存在となった。
あの日、たまたまテレビを見てて。
たまたま川遊びに誘われて。
たまたまでんぱ組.incのオタクがクラスにいて。
たまたま、地元にツアーできてて。
そんな偶然が上手いこと重なって、生活の一部に欠かせない推しの存在がいる。